H E L M I

わたしの日々のこと

『黒い海』。

武田砂鉄が本を紹介するPodcastで知って図書館に予約した本が、やっと読めた。

2008年に起きた漁船の転覆事故の真相を追う、ルポでありミステリー。本作中に謎は解けきらず、現在も作者は取材を続けていて、情報開示については係争中。「事故」ってことになってるけど、書影の帯にもある通り、これは「事件」だ。

読むと、本当に丁寧に、真摯に取材されたんだなと感心するし、その分、国側の調査報告書やそれに関わる人たちに憤りを感じたりもする。17人もの乗組員が亡くなっているのに、そんなに冷淡になれるものなのか。

自分でもびっくりしたんだけど、読んでいて涙が出てきた。こんなの、浮かばれない。第三者が本になったものを読んで怒りを感じたり、涙を浮かべたりするような事実に接した、関係者や被害者の家族たちのことを思うと、本当に胸が痛くなる。

どんな結末が待っているのか。そもそも、決着は着くのか。真実は一体どこにあるのか。いつになれば終わるのか分からないけれど、きっと辿り着ける場所があるはず。そこに真実があるはず。いち読者としても、信じたいしそう願う。