ここのところあまり映画をチェックしていなくて、久しぶりの映画館。観たのは、習い事の先生からおすすめされた『コンパートメントNo.6』。この映画の監督であるユホ・クオスマネンの『オリ・マキの人生で最も幸せな日』がとても良かった、という話の流れから、そう言えば......という感じですすめられた。
そんな訳なので、カンヌだのゴールデングローブだのは全く知らなかったから、なんで連日満席なのかもわからず、ただ、「あの監督がロシアを舞台に、フィンランド人を主役に撮ったロードムービー」くらいの予備知識で観たのだけど。
やっぱりすごく良かった。北欧の映画で観られる、めちゃくちゃ美しい自然の風景とか、行ってみたいと憧れさせるものはほぼなにもない。主人公の、恋人の属する華やかな階級みたいなものに、入れていない、受け入れられていない感じから始まる、孤独さ。しかも、恋人は自分を「友達」とか「下宿人」としか紹介してくれないし、楽しみにしていたふたりでの旅行もドタキャンされて、旅の途中に電話してもどんどん素っ気なくなっていくの。客観的に見ていて、もう、本当は厄介払いされたんじゃないかとすら思ってしまうほど。
で、本当だったらラブラブ空間になるはずだったコンパートメントで同室になったのが、絶対やだ絶対仲良くなれない無理無理無理! って感じの男。主人公の憧れる世界には絶対いない、粗野で下品な酔っぱらい。彼も、初対面の印象は最悪だけど、なんだか複雑で不器用な人。
そんなふたりの、ラブストーリーと受けとるのがストレートな見方なんだろうけど、そこは正直どうでもいいというか。友情で全然いいと思うんだよね。むしろそっちの方がいい。これはロードムービーで、冒険の旅。自分が自分でないような、焦りや不安や嫉妬から抜け出して、自分を信じて行きたいところへいく、そこに、仲間がいるとちょっといいよね、みたいな。わたしはそう思った。