あの日は仕事で香港に行った。確か、搭乗を待っている時に、社長が「東京の方で地震が起きたらしい」と言っていたように思う。その時は仕事のことで頭がいっぱいで、何が起こっているのか、全く知らなかった。
香港に到着し目的地に向かう間ももちろん何も知らず、仕事相手から東京ではなく東北で地震が起きたことを知らされたのだけれど、全く想像がつかなかった。夜遅くにホテルに戻り、ミーティングの後同僚と連れ立ってマッサージを受けに行った。日本人と分かるとスタッフの方たちからSo sorryと言われ、ありがとうと答えたけど、その時もまだ、仕事の緊張間から抜けきれていなかった。ふわふわした気持ちのまま、マッサージ用のチェアでうとうとした。
翌日。朝食を食べに行ったら、大きなテレビでBBCのワールドニュースが流れていて、そこで初めて映像を見た。衝撃が凄すぎて言葉が出なかった。2泊3日の日程中ホテルの部屋を含めて常にお客様と一緒という苦行のような出張だったから、朝食をとる時以外に自分の時間なんて無くて、ものすごいことが起こっていると分かりながら、遠いどこかの出来事のようにも感じていた。
家のテレビは壊れていたし、もし壊れていなくても激務で家にいる時間が極端に少なかったから、「遠いどこかの出来事」のように感じたその気持ちのまま、何年も過ごしてしまった。
魂が救われますように。被災地と被災者のみなさんに、幸せだけが訪れますように。
